こんにちは、いいだりょう(@aviciida)です。
お久しぶりのブログ更新です。
このブログを書き始めてからちょうど1年ですが、最近ご縁があり、
シリコンバレー本を翻訳出版させていただく機会がありました。
The San Francisco Fallacy -起業家を殺す10の迷信- (no9 books)
- 作者: ジョナサン・シーゲル
- 出版社/メーカー: ナンバーナイン
- 発売日: 2019/03/29
- メディア: Kindle版
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今回のブログはその本の概要や僕がその本から学んだこと、
そしてライター歴1年弱(本格的にやり始めてからは半年くらい)で、
どのようにして翻訳出版の機会を得ることができたのか、
振り返ってみたいと思います。
翻訳した本「The San Francisco Fallacy」とは
今回出版する「起業家を殺す10の迷信」は、連続起業家のJonathan Siegel氏の「The San Francisco Fallacy」の翻訳本です。
本書は、起業家や起業を考えている人に読んでもらいたいのはもちろんですが、この本から得られる教訓は人生全般に大きなインパクトを与えるはずです。
著者のJonathanは10代からサービス開発をしてきたイノベーター。
作ったプロダクトはBulletin Board System(BBS)のサービスから始まり、ビデオゲームやスポーツ統計システム、さらに会計処理ソフトや電子署名サービスまで、多岐に渡ります。
普通ならビジネスの「ビ」の字も知らないような年齢で、かつ、まだインターネット黎明期だった1990年代からインターネットサービスを作っていた生粋の起業家のJonathanが、20年に渡るサービス開発で経験した数多くの失敗から抽出した「起業家を殺す(サービスが失敗する)10の迷信」。これが本書で紹介されています。
本書の面白いところは、彼が10代の頃から挑戦してきた数多くのサービス開発における失敗談が中心となっているところです。
多くのビジネス書が「自分はこういう風に成功した」のようなテイストで、
「書いてるようにこんなうまくいくものだろうか」と読みながら感じる人は少なくないはずです。
もっとも、おそらくそのような本の著者も、成功の陰で厳しい失敗を何度も経験しているはずですが、そういうことが書籍という場で語られることはあまり多くありません。
しかし、「失敗は成功の母」ということわざがあるように、失敗ってやはりとても重要だと思っています。
このように、「大事だけどあまり本に書かれないこと」というのが本書ではたくさん紹介されています。
どんな内容なのか
紹介される迷信はこんな感じになってます。
- テクノロジーの迷信(技術があれば勝ち)
- 民主主義の迷信(創業メンバーは平等であるべき)
- 投資の迷信(巨額投資は成功のしるし)
- 失敗の迷信(失敗を前提に事業を作るなんてありえない)
- 専門家の迷信(事業を作るときはまずその領域に詳しい人に聞け)
- アイデアの迷信(アイディアが良ければ勝ち)
- スケールの迷信(スケールしないプロダクトはダメ)
- ロレアルの迷信(自分が正当に評価されるまでEXITはするな)
- クオリティの迷信(完璧なクオリティでローンチしろ)
- パッションの迷信(パッションが全て)
基本的には「スタートアップ界隈で当たり前とされている風習(迷信)」が、
いかに危険なもので、スタートアップを殺しかねないか、
というのを著者の失敗談を元に紹介していきます。
アメリカ独特の話も少しありますが、基本的に紹介される話は「スタートアップ界隈」の人なら「それな〜」となるような話が多いと思います。
個人的に解釈した、本書のメッセージ
原文をめちゃくちゃ読み込んだ翻訳者として、1つだけ、Jonathanの伝えたいことを書きます。
本書のメッセージは「10の迷信に惑わされるなよ!」というもの、と言うよりも、
起業家としてあるべき「当たり前を疑う」姿勢を本でもって表しているように感じました。
もちろん、本書に書いてある迷信は「たしかに!気をつけないとな!」と思うようなものが多いのは確かです。
しかし、この本に書いてあることが全てのシチュエーションで真実になるとはJonathanも思っていないはずで、この本を読んで「じゃあこの迷信と逆のことをすれば良いんだな」みたいに安易に流されて欲しくないはずです。
彼が本書の冒頭で述べている通り、この本を読んだからといって全ての迷信に陥らなくなる訳ではなく、あくまで「思考の糧(Food for thought)」として読んでほしい、と述べています。
だから、この本を読んで、書いてあるままに受け取るのではなく、事象一つずつ「〇〇という風に対処するのが当たり前と言われてるけど、それって本当なのだろうか」と、当たり前とされていることをも取っ払ってゼロベースで考えられるようになってほしい、というのがJonathanの願いかと思います!
もう一つこの本で学んだのが、これは個人的に思い当たる節が多いことなのですが、
とりあえず試してみることの重要性です。
これは本書を出版する経緯を振り返りながら説明したいと思います。
どうやって翻訳の機会をもらったの?
今回、シリコンバレーの本を翻訳するという、とっても素敵な機会をいただいたのですが、そもそも僕がライターとして活動し始めたのも「とりあえず試してみた」というのがきっかけでした。
僕はもともと文章が書くのは本当に苦手で、小学校の読書感想文とか本当に地獄でした。
ネットで見つけた文章をほぼ丸パクリするか、母親に頼んで書いてもらうレベルです。
(母親にも「あんたは本当に文章はダメね」と言われていましたw)
だから自分は文章を書くセンスは皆無だと思ってたんですね。
しかし、ひょんなきっかけで、2017年バンコクでインターンしてた会社の社長のインタビュー記事をアセナビで書く機会に恵まれ、「とりあえず試してみるか」で書いてみました。
そして、人生で初めて書いた記事がこれです。
飛び抜けた人材に!マッキンゼーを辞めてアジアで経営に挑戦する Empag COO 石崎優氏 | アセナビ
しかしこれが意外と(intervieweeのマモさんのおかげで)好評で、
ライティングに関して少しだけ自信がつきました。
2017年末にバンコクから日本に帰国し、
2018年の最初の数ヶ月は「自分の力で金を稼ぎたい!」などと思って、でも何もスキルないからとりあえずブログでも書くか。。。
という感じでブログを始めました。
書き方とかわからないので散々なクオリティだったと思いますが、
書いていくうちに、「スタートアップ系」「英語→日本語翻訳系」「人の話の書き起こし系」は意外と読んでくれるな、というのがわかりました。
そんな感じでフラフラしていると、
ブロックチェーン界隈で有名なオビーチーさんから声かけていただいてa16zの記事を翻訳したり。
そしたら幻冬舎のたっけさんから声かけていただいて、「あたらしい経済」のライターやらせていただいたり。
そしたら今度はProgateでもライターさせていただく機会に恵まれたり。
翻訳関連のライティングが多かったので、色々難しいなーと思いながら色んな方を参考にさせてもらってました。
その中でも、「圧倒的にすごい。。。。」と思ったのが、FACTFULNESSを翻訳した上杉さんです。
英文を完全に理解して日本語に直すだけでなく、その日本語の言い回しも本当にうまい。
すごいなーと思ってこんなツイートをしました。
英語ならではの言い回しをどう日本語訳するか、というのはかなり腕の見せ所かなと思います。
— Ryo Iida/飯田 諒 (@aviciida) July 18, 2018
そういう点では上杉さん@chibicode の翻訳記事は神やと思ってます。
独特の言い回しにちゃんとわかりやすい訳注つけられてますし。https://t.co/gyzcSrD4NKhttps://t.co/vvpdXZ0ktX
この辺りはまじですごい https://t.co/EMzdppkK4U
そしたらわざわざアドバイス付きのこんな素敵なDMをいただきました。
「🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️🙇♂️」
みたいな感じでした。本当に嬉しかったですw
そうこうしているうちに年末になり。
すると突然、上杉さんからこんなDMがきました。
実はこの素敵な翻訳の機会は、尊敬してやまない上杉さんからいただいたお話だったんです。
2017年のあの時、「しょぼくてもいいから書いてみるか!」と思わなかったら、
2018年に「とりあえずブログやってみるか」と思わなかったら、
この機会には恵まれなかったはずです。
「試してみる」本当に大事です。
色々試してみると、人生の解像度が上がるのでめっちゃ好きです。
ライティングを試してみると、今までぼんやり記事を読んでいたのが「この言い回しうまいな」とか「この日本語訳、どういった英文から翻訳したのだろうか」と思うようになるし、
デザインをちょっと勉強してみると、今までゴミ同然だったポストにあるチラシが全部クリエイティブの参考になったり電車の中が広告の宝庫だったりするし、
プログラミングを勉強してみると、訪れるサイト全部「どんなコードになっているのか」と確認するようになります。
何かを試してみると、今まで何も思わなかったものに「こうなっているのか!」という発見ができます。解像度が上がる気がしますね。
本書で「試してみる」というのは、「とりあえずMinimum Viable Product(MVP)をマーケットに届けて、そこから改善しろ」という意味で使われていました。
もちろんスタートアップにおいてその考え方はとても大事ですが、
スタートアップ関係なく、人生やっていく上で全体的に大事な気がします。
という感じで、
- 下手だけどとりあえず記事書いてみる
- とりあえずブログ作ってみる
- とりあえず色々ツイートしてみる
みたいなことをやっていたら、素敵な機会に恵まれました、という話でした。
軽い近況報告
翻訳業務を本業としているのかといわれると、全くそんなことはありません。
今は英単語アプリmikanでがっつりフルで働いています。最近300万DL突破しました。
SQLでアプリ内の分析したり、SNS広告をちょっと回したり、デザインをちょっと作ったり、コンテンツ拡充のためにPythonでスクレイプしたり、CSの対応したり、事業に必要なところは何でもやる感じで頑張ってます。
こんな感じで毎日六本木で働いています。(iOS/Androidエンジニア募集中です)
謝辞
別に著者ではないですが、自分にとって大きな出来事なので、感謝を述べたいです。
まずは、他にも多くの人がいる中で僕に声をかけてくださった上杉さんには感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。
次に、会ったばかりの僕を信頼してくださったナンバーナインの小緑さんとあらけんさん。特に小緑さんは僕の未熟な翻訳文を丁寧に編集してくださり、素晴らしい本に仕上げてくださいました。ありがとうございます。
そして、受けようか悩んでいる時に「やってみたらいいと思いますよ」と背中を押してくださったTT高岡さん、ありがとうございます!
そして何より、浮きも沈みも支えてくれる家族やパートナーに感謝です!
読んでいただきありがとうございました。
(3月10日、イタリアからの飛行機の中で)
これからも人生がんばろう
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