メルカリの目指す世界と、これからの成長に必要なこと(山田会長講演会メモ)

4月10日にこんな面白いセミナーがあったので行ってきました。日経新聞を購読しててよかったです。

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とてもためになる面白い話だったのでまとめてシェアしようと思い、ブログにしました。面白かったらぜひシェアしてください。

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絶望的な撮影スキルです...



メルカリの原点とこれから

いろんなものが滑らかに循環する世界を作る

-メルカリの目指す世界は何なんでしょうか

ミッションは、新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを作るというものです。多少は変化していくとは思いますが、マーケットプレイスやc2cはとても大きなテーマ・市場で面白いと思っています。なぜかというと、インターネットとの相性がとても良くて、うまくマッチングできれば個人がエンパワーされるからです。

この着想を得たのが、ウノウを売却してから世界一周旅行で新興国を見てきた時です。みんな豊かになろうと頑張っていたのですが、なかなか資源も限られていて、欧米のようになるのは少し難しいかもしれないという問題意識がありました。

そして日本に帰ってきて、2012年秋ごろからスマホの爆発的な流行を感じたんです。日本だけでなく、世界中の人が一人一台持つ時代がやってくると確信しました。その時に、モノやカネがシームレスに交換できるようなサービスやプロダクトがあれば、世の中がもっと豊かになると思いました。

日本国内ではメルペイ(決済)やメルチャリ(自転車シェア)などをやろうとしていますが、それ自体はメルカリ社としてこういうことができますよ、というショーケースだと思っています。本当に自分たちが人々の生活のコアになれるようにメルペイやメルカリなどのサービスはこれからもっとオープンに解放していこうと思っています。

その上にいろんなサービスが乗っかることができるエコシステム(経済圏)を描いて、それによってサービス、モノ、カネがもっと滑らかに循環する世界を実現したいです。そしてそれをテクノロジーによって実現していきます。

 

3年で技術者1000人体制へ

-鍵となるのはエンジニアだと思います。どの事業会社もエンジニア採用に苦労しているようですが、メルカリはいかがですか

日本語は喋れなくてもいいと思っていて、外国人のエンジニアを採用し始めています。現在で10-20人くらい働いてもらっていますし、今年の10月にはIIT(インド工科大学)から30人くらい使用する予定です。これからの技術は新しくて難しいものが多いので、インドの「top of the top(トップの中のトップ)」の人材の力も借りながら、スマートにやっていきたいです。

アメリカのトランプ政権で外国人による就労ビザが取りにくくなっていることも、日本での採用にとっては追い風です。インド人のような優秀な学生の第一の行き先であったアメリカに行きにくくなったことで、彼らにとって日本での就職というのも選択肢に出てきていると思います。このように、外部要因(今回でいうトランプ政権)もうまく使っていきます。

メルカリは3年で1000人の技術者の採用を掲げていていますが、半分くらいを外国人でまかなわないと厳しいです。インド人採用は今年30人ですが、来年は倍以上伸ばして行きたいですし、それだけではなく、中国やロシアなど、多様な国から採用したいです。



海外進出への思い

日本発で世界中で使われるものを作りたい

-なぜ海外に強い思いがあるのでしょうか?

メルカリの前に自分がやっていた会社(ウノウ:Zyngaに売却済み)でも「世界的なインターネット企業を作る」というのを掲げてやっていたんですが、それがうまくいかなかったので今もやっているという感じです。

その前に2004-5年でアメリカに滞在したことがあったんですが、インターネットの中心であるアメリカに対しての憧れがありました。当時ははインターネットのビジネスだけでなく飲食みたいなものもやろうと思って試行錯誤してました。

自分が滞在していた頃のサンフランシスコは、本当に美味しい料理屋さんというのがなかったんです。そんな中で「ちゃんとした店を作ったら流行るのではないか」と思って、もともと日本食レストランをやっていたが売却して引退していたおばちゃんと一緒にやるというのを真面目にやっていました。

ただ、やっぱり自分はインターネットサービスを作るのが自分の天職だと思ったんです。楽天で働いていたこともあり、インターネット業界は知り合いが多く、シリコンバレーでやるよりも日本で始めて世界中で使われるものを作ろうと思いました。

 

-戦後、ソニーやホンダなどの企業や、イチロー選手や野茂選手など野球選手が世界で活躍していますが、インターネット企業だとあまり成功例が少ないように感じます。なぜでしょうか

チャレンジの数の問題だと思っています。そもそも、海外で挑戦しようとするインターネット企業が少ないのです。サッカーや野球を見てみると、最初は通用しないだろうという前評判があっても、実際は通用するという場合も多いですよね。意外と海外でも通用するじゃん、というのがわかれば自分でもやってみたいという人が大勢出てくるはずです。

インターネット企業としてメルカリがそういうロールモデルになれればいいと思っています。

 

アメリカにはたくさんのチャンスがある

-日本版メルカリのリリースが2013年7月、その翌年の3月にアメリカに子会社をたて、9月にはサービスをスタートしました。日本の地盤を固めずにアメリカに出たのは無謀にも見えますが。

まず、早くアメリカでやりたいという気持ちがありました。ウノウをZyngaという会社に売却して、アメリカで1.5年くらい働いたことがあり、そこでシリコンバレー的な組織の作り方を学びました。シリコンバレーという最先端のノウハウをできるだけ早く自分の会社(メルカリ)で試して、それを日本に持ち帰るのも良いと思いました。

次に、アメリカの市場の大きさもあります。ebayはアメリカ市場だけでもYahooの5倍、ヨーロッパも含めると10倍の規模があり、日本でここまで行けるんなら、もしアメリカを取れればさらに大きくなるチャンスがあるのではないかと機会を見出しました。

投資家としてもこれはリーズナブルに映ったようで、チャンスがあればやろうという話になりました。

 

アメリカで通用するものは世界で通用する

アメリカは色んな国からいろんな言語や文化を持った人が集まる集合体で、世界の縮図とも言えると思います。ハリウッド映画は誰が見ても面白い/泣けるように、この国で受け入れられれば、世界中で受け入れられると思います。インターネットサービスにしても同じです。GoogleやFacebookをはじめ、世界的なサービスはアメリカのシリコンバレーから出てきています。

そういう市場で戦っていると、デザインなどを含め自分たちのコアなものについてのエッセンスを抽出しやすいんです。メルカリののコアな部分/コアコンピタンスってどこなんだろうというのを振り返る機会が多いです。

 

リアルビジネスの難しさ

一方で、リアルビジネスと関わってくると、単なるネットの世界の原理原則では動かなくなってきます。Uberのように、規制との兼ね合いなどで、それぞれの国で激しい戦いが起こるビジネスもあります。

GoogleやFacebookまではいけても、その先リアルに近づけば近づくほど、規制や国の事情にビジネスが影響されやすくなります。

メルカリもただのインターネットビジネスではなく、リアルビジネスの側面も含んでいますので、国によって違う規制に対応していかなければいけません。だから我々は必ずしもメルカリが一つのプラットフォームで全部やる必要はないと思っています。それぞれの国にメルカリ的なものがあれば、そこと提携して、日本で車を出品したらアフリカのメルカリ的なプラットフォームで買えますよ、みたいなものがあってもいいかもしれません。

全部を自分の財閥で囲むのは難しくて、そういう意味でもいろんなプレーヤーと協力・共生していくのが重要だと思っています。

 

2017年のメルカリ悪用の騒動を振り返って

大きな存在として見られていることに気づく

-2017年は、現金(現金の折り紙)や偽ブランドが出品されて問題になるなど、タフな年だったと思います。中からはどのように感じましたか?

私達からすると、普通にベンチャーという若い会社として必死にやってきて、そういう報道(テレビなどマスコミでの問題の取り上げられ方)を見て初めて「すごい大きな存在として見られている」ということに気がつきました。逆に、世間からそう見られているということをそれまで気づけていなかったのが反省点です。

ユニコーンと呼ばれたりもしますが、それはあくまで一部の投資家さんにしていただいた評価という認識でしかなく、大きな存在であるとは夢にも思わなかったです。

 

安心安全な場を提供することがこれからの成長につながる

-今後サービス内に規制をかけていくと、メルカリの成長の鍵であった「手軽さ」が損なわれるかと思いますが、どうお考えですか?

メディアや省庁などの各方面から指摘があり、このままではいけないと気づきました。自分たちが社会の公器としてルールを作っていく側にならなければいけないんです。去年は悪い報道が続き「メルカリって盗品や偽ブランドが売られているんでしょ」と感じる方が増えたと思います。それを、自分たちがルールを作っていき場の健全性を確保することで「メルカリって安心安全なんだね」といった認識に持っていければ、じゃあ私もやってみようかなと、お客様自体が増えていくと思っています。AIやマシーンラーニング(機械学習)で異常行動を検知するテストなども、より多くのお客様に使っていただくために力を入れています。

最初はたくさんのユーザーに使ってもらいたくてできるだけ手軽に出品できるようにというのを意識していましたが、今はメルカリ自体みんなが知っているという状況になりました。このような状況では、手軽さや利便性が多少下がったところで、UX(ユーザー体験)がそれを上回るので、相殺されると思っています。今からは場の健全性を保つことでユーザーが増えるということに気づいたので、前向きにやっています。

 

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山田会長がアメリカヘッドのJohnさんをロンドン発日本行きの飛行機内で口説いた件を入れたかったのですが、どうしても文脈が合わないと思ったので省略しました。

日経新聞にそこらへんが書いてあるのできになる方は読んでみてください。

www.nikkei.com

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感想

さて、いかがだったでしょうか。

自分自身、最近c2cの威力を感じた出来事がありました。

新しいMacBookが欲しくて、今まで使っていたMacを売って新しいのを買おうと思い、実際にメルカリとラクマに出品してみると、もともと15万円くらいで買ったものが3年フルで使い倒した後に8万円で売れたんです。

めっちゃ感動しました。数年前に同じようなことをしようとしても、どっかの家電量販店で3~4万円にも満たない価格でしか買い取ってもらえなかったと思います。それがメルカリをはじめとするc2cマーケットプレイスが出てきてくれたおかげで、買った額の半額以上で売れたんです。

 「c2cサービスは個人をエンパワーする」と山田会長がおっしゃってましたが、それを一人の消費者として実感した瞬間でした。

他にも、Uberによって持て余してた時間をドライブすることでお金が稼げるようになり、Airbnbによって余った部屋を貸し出してお金が稼げるようになり、Anycaによって車庫で眠っていた車を貸し出してお金が稼げるようになるなど、フリマ分野だけでなく、いろんな分野でc2cが人々の生活を豊かにしていると思いました。

もちろんネット上で完結せずにリアルとの繋がりがある分、規制と戦っていくことは避けられませんが、当局と協力しながら普及を進めて、より自分たちの生活を豊かにして欲しいです。

 

また、講演の中で山田会長が頻繁に「(わからなくてもいいから)とにかくやってみる/チャレンジしてみる」という言葉を頻繁に使っていたのが印象に残っています。

世界に通用する日本のネット企業がまだ出てきていない中で「メルカリが前例を作ってやろう」という気概で世界に進出したり、会社で働いたことがないのに会社を作って試行錯誤したり、とにかく行動量が多い人だと感じました。

やっぱり頭でどれだけ考えても、行動してみないと実際どんなもんなのかわかりませんし、やってみて初めて(うまくいってもいかなくても)次のアクションが考えられるので、成長スピードも早いんですねぇ。

行動量の多さが大事な理由がわかりました。自分も頑張りまーす!

 では!

 

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